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テーブルマナースポット
蛭間氏
■■■ 講師・蛭間淳一氏プロフィール ■■■

 プリンスホテル、ホテルセンチュリーハイアットにてホテルマンの基礎を学ぶ。その後、浅草ビューホテルレストラン課支配人、駿台トラベル&ホテル専門学校講師を兼任、横浜ロイヤルパークホテル・婚礼営業支配人など。1989年フランスより文化功労賞受賞。

日刊きりゅう紙上に掲載された、これまでの「テーブルマナーにスポット」をネット上でも紹介いたします。蛭間支配人の経験から得た事柄や、思い出話などを「マナー」にスポットをあてながら紹介してまいります。

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テーブルマナーとは…
 日本語で言う食事の作法の事です。

 マナー、エチケット、ルール、行儀作法、礼儀作法、規則、規約、日常の立ち振舞、相手を敬う気持ちを表す言霊が、少しずつ年月を重ねて失って行く様を感じているのは私だけではないと思います。

唐突ですが、皆さんの一日の食事回数は2度又は普通に3度、そんな取られ方が大半を占めると思われますが朝はパンにコーヒー、昼にラーメン、夕飯はご飯に味噌汁、焼肉に刺身、漬物も加えて、そんな感覚で食事の暦が和洋折衷全て、奥様依存で進んではいないでしょうか?その時の箸の持ち方、ナイフ、フォークの使い方をいちいち考えないで食事を取られるのがあたりまえなのは解っております。

そこで、身近に文化を感じさせる「食」を通してもう一度、行儀、礼儀、規則、そんな事を堅苦しいマナー(べからず集)だけではなく、食の言霊をふまえ、料理を楽しく、美味しく食べる事への手段を、この機会に自然体な食文化をふまえ記載したいと思います。

〔西洋料理のテーブルマナー〕
 
方法論として、何においても基本となるベースが有ります。そのベースさえ覚えてしまえば仏蘭西の三ツ星レストランに行っても、全世界に張り巡らされたヒルトンホテルのダイニングでも臆する事無く堂々と大口を開け料理を堪能できることでしょう。

 レストランの予約からいざレストランに入り、席につき、料理注文そして食事を終え、チェック(ビル)勘定をしてレストランを出るまでの時間を西洋料理の背景をふまえ正確に記載していきたいと思います。

   

テーブルマナーの歴史観
 時は19世紀のビクトリア女王時代にさかのぼります。歴史上もっとも形式、道徳、倫理観、そんな単語が今で言うトレンドだった時代です。

 テーブルマナーは王侯、貴族のグローバルスタンダードになっていき、そして、その後、我々一般庶民の手にバトンが渡ってきたしだいです。

 しかし、簡単に庶民にバトンが渡ったわけではありません。バトンを渡す人からバトンを貰う人までの時の空間を駆け抜けた偉人が数多くいらしたその中で、19世紀から20世紀、パリ、ロンドンで活躍し、そして全世界に料理電波を発信し、我々庶民に西洋料理、そしてそのマナーまでおも取りつないでくれた一人の人…オーギュスト エスコフィエ、その人となりを紹介させていただければならないと思います。

 1846年ニース郊外の村にて彼は生をうけ、一通りの修行時代を経てロンドンのサヴォイホテル、カールトンホテルの料理長を経験、体験し、パリにあるオテルリッツの創始者セザール リッツと出会い、さらに才能を開花、料理人の社会的ステータスの向上、食にたずさわるあらゆる人々の社会的位置付けの向上を見事なまでにはたしました。

 その背景には、フランスという国の、文化に対するポジティブな考え方が大きな礎になったことは言うに及ばず、又、現在もそのスタンスは変わりなく進んでいます。

 かつて、一流のレストランではコース料理の設定は存在しませんでした。エスコフィエはこれを考案し、値ごろ感の良い食事を可能にしました。現在のレストランや、ファーストフード店の、セットメニュー、コースメニューはそんな所からの発祥なのです。

 私自身フランスに行った折、エスコフィエ記念館に圧倒された一人です。パイオニアとは苦行僧のようなものと、氏の残していった書物や、走り書き文章に感じ入ってしまいました。

 1903年西洋料理のバイブルともいわれる(ル・ギートキュリーネール)を刊行、5000以上の料理のレシィピィーが載っており、現代においても基本確認のため、プロの料理人達が一度は目にしなければならないとまで言われています。数々の書物と歴史の躍動を残し、レジオンドヌール勲章を2度にわたり授与され、1935年モンテ・カルロにて亡くなりました。

 エスコフィエの残した文化は日本にも大きく影響、近い時代ではホテルオークラ故小野正吉総料理長、帝国ホテル村上信夫総料理長、その弟子達、両ホテルの基盤を作った大倉財閥、大倉喜八郎と、名前を挙げたら切りがないでしょう、が、あえて記載させていただきます、故、プリンスホテルグループ坂本順一氏、現横浜ロイヤルパークホテル取締役副総支配人、河地哲郎、現岡山国際ホテル取締役総支配人、林正一氏、尊敬する私のかつての上司名を記載しておきます。

 日本における西洋料理、そしてマナー歴史のバトンを先人達が確かに受け取り現在に到っています。

  


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